病の語りとは?

質問:『病の語り』とは何でしょうか?

答え

英語では、『illness narratives』といいます。日本語に訳すと『病の語り』となります。日本でいうところの体験談(闘病記)といったイメージに近いと思います。
病気を診断され治療を受けていく時、どのように悩み、迷い、葛藤してきたかは同じ病気を体験した人でないとわからないのかもしれません。同じ病気を体験した人の言葉は、きっと、あなたを癒し、悩みを解決してくれることと思います。

解説

病の語りを患者さんの治療に取り入れている医師の第一人者であるコロンビア大学医学部教授のリタ・シャロン博士の言葉を借りると病の語りとは

― 科学的に優れた医学だけでは、患者が病気と闘ったり、苦しみの中で意義を見出したりする手助けをすることはできない。科学的な能力とともに、患者の話を聞いてその意味を把握して尊重し、その上で患者の身になって行動する能力が医者には必要なのです ―

簡単に言えば、昔から医師への戒めとして言われているように、『病気や検査のデータばかり見てばかりいないで、患者さんを診ろ(患者さんの話を聞け)』ということでしょう。

このように患者さんの症状を医療関係者が理解するのに時に必要である病の語りですが、この病の語りは同時に同じ病気を患った方々やその家族に対しても役立つことがわかってきています。
古くから英国では、患者さんのこうした体験談をまとめて誰でも閲覧できるデータベースが作成されてきました。英国DIPExという非営利団体が行っているHealthtalkというものです。日本にもディペックス・ジャパンという団体があり、まだ対象の疾患の数は少ないですがデーターベースができてきています。
関節リウマチを診断した時、治療していく時、私たち医療従事者は患者さんの不安を和らげ、将来に前向きになれるよう心がけています。ただ、そういった患者さんがつらい時に私たち医療従事者の言葉が患者さんの気持ちに十分届かないこともあります。
病気を診断され、治療を受けていく時、どのように悩み、迷い、葛藤してきたかは同じ病気を体験した人でないとわからないのかもしれません。
同じ病気を体験した人の言葉は、きっと、あなたを癒し、悩みを解決してくれることと思います。

謝辞

今回、クリニックに通院中の方々に協力を得て、関節リウマチ 病の語りのデータベースを作成することができました。
こうした同じ病気を体験した人の声が、皆さんの癒しと励ましにつながることを願います。

この場を借りてご協力いただいた通院中のみなさん、および当院のスタッフ(特に中心になった看護師さん)に感謝したいと思います。

今後も引き続き、データベースをアップデートしていきたいと思います。
協力していただける方を引き続き募集しています。
よろしくお願いします。

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